御厩河岸より両国橋夕陽見

浮世絵

葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「御厩河岸より両国橋夕陽見」について説明する。

この浮世絵の富士見の渡しと呼ばれた御厩川岸(おんまやがし)は、隅田川の両国橋と吾妻橋の中間、現在の厩橋が架かる付近である。
ここは将軍の厩(うまや)があったことから、御厩川岸と呼ばれる。

橋の向こうに広がるのは、両国の向こう岸・柳橋の風景である。
富士山の位置からして厩橋の北側から捉えており、渡し船が対岸の浅草方面に向け離岸した刹那を描いている。
船は帰路を急ぐ客で溢れ返り、一日の疲れからかうずくまる客、水面に手拭いを濡らしている客がいる。

船を漕ぐ船頭の目線には、夕日に浮かんだ富士山の美しいシルエットを臨む。
「夕陽見」とあるので、色づく夕焼けが終わった後、人びとが青のモノクロームの世界に浸っている。
夕方の表現を手前を鮮明に、奥をぼやけさせてそれにより夕方がはっきりわかるの表現は浮世絵師の北斎らしい。

この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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