
歌川広重-名所江戸百景-98-秋-小奈木川五本まつ 解説
現在の住所:江東区 小名木川付近
緯度経度 :緯度:35.6750 経度139.8180
出版 :1856年7月 年齢:60歳
観光ガイド風解説:「小奈木川五本まつ」
■ はじめに
歌川広重の『名所江戸百景』は、江戸の四季折々の景観と庶民の暮らしを鮮やかに描いた傑作シリーズです。
その中でも「小奈木川五本まつ」は、下町の運河沿いに立つ松を題材とした作品で、江戸市民にとっての「ちょっとした名所」を浮世絵に仕上げた一図です。
江戸の人々は、川沿いや街道にそびえる特徴的な樹木に愛着を抱き、待ち合わせ場所や行楽の目印として親しみました。
五本並んだ松はランドマークとして広く知られ、広重はその姿を川辺の景観とともに描き出しています。
■ 小奈木川とは
小奈木川は、現在の東京都江東区亀戸から大島・北砂町あたりを流れていた運河です。
江戸時代には中川・荒川方面と江戸市街を結ぶ重要な水路で、木材や農産物、魚介類などを運ぶ船が頻繁に往来しました。
運河としての役割を担うと同時に、周囲の農村や町の生活用水としても使われました。
小奈木川は江戸の町にとって物流と生活を支える大切なインフラでした。
小奈木川は明治以降の都市開発や河川改修により埋め立てられ、多くは現存しません。
しかし、江東区内には川跡を示す地名や細長い道路が残っており、江戸の水運の記憶を今に伝えています。
■ 五本まつとは
川沿いに五本並んで植えられた松の木が「五本まつ」と呼ばれ、旅人や舟人の目印になっていました。
江戸の庶民にとっては「名所」として親しまれ、句や歌にも詠まれたほどです。
江戸の川沿いには「一本松」「七本松」など、樹木を基準にした地名や待ち合わせスポットが数多くありました。
「五本まつ」もその一つで、庶民の日常生活に密接に結びついた名所といえます。
松は常緑樹であり、長寿や不変の象徴として江戸時代の文化に深く根付いていました。
五本の松が並ぶ姿は、ただの自然風景以上に「縁起の良い景」として愛されたのです。
■絵のみどころ
小奈木川は、隅田川と中川を結ぶ、実際には直線の航路です。
幕府が浦安から塩を運ぶためにつくったもので、「小名木川」とも書きます。
この付近には鍋屋が軒を連ねていたことから鍋屋堀とも呼ばれました。
五本松という地名の由来は、1732年刊行の『江戸砂子』では、はじめ小名木川にそって五本の松が植えられました。
他は枯れてしまい、この一本残った松の付近の地名になったとされる。
広重の頃になると、この松が綾部藩主九鬼家の下屋敷から道を一つ隔てたところまで枝を広げていきます。
水面を覆うほどの大樹となり、稀代の名木となりました。
松の下は深川と行徳を結ぶ長渡船で、客が川に手拭を浮かべています。
■ 現代の小奈木川周辺を歩く
現在は埋め立てによって川そのものは失われています。
江東区の亀戸や北砂あたりを歩くと、細長い道や水路跡にその痕跡を感じることができます。
■ 観光ガイドおすすめコース
①亀戸駅スタート
歴史の残る亀戸香取神社に参拝するとよいでしょう。
②小名木川沿い散策
川跡の遊歩道を歩きながら往時を偲ぶことができます。
③中川船番所資料館
水運の拠点を学び、「五本まつ」が名所として親しまれた背景を知ることができます。

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