浮世絵 歌川広重 名所江戸百景 96 秋-鴻の台とね川風景  解説

歌川広重 名所江戸百景 鴻の台とね川風景  解説 名所江戸百景

歌川広重-名所江戸百景-96-秋-鴻の台とね川風景  解説
              
現在の住所:市川市 国府台 
緯度経度 :緯度:35.7135 経度139.9030
出版   :1856年5月  年齢:60歳

観光ガイド風解説:「鴻の臺とね川風景」
■ はじめに
歌川広重が手掛けた『名所江戸百景』は、江戸の名所を四季折々の風景とともに描いた全119図からなる大シリーズです。
その中でも「鴻(こう)の臺とね川風景」は、江戸の北東に広がる大自然と、雄大な利根川の流れを背景にした一図です。
江戸の中心部を離れた場所でありながら、江戸庶民にとっては「ちょっとした旅情」が味わえる絶好の行楽地でした。

広重はこの作品で、鴻の臺と呼ばれた高台から利根川を遠望し、その広がりと自然美を画面に収めています。
街の賑わいを描いた日本橋や浅草の作品とは一味違い、江戸近郊の静けさと雄大さを楽しむことができるのが特徴です。

■ 鴻の臺とは
「鴻の臺(こうのだい)」とは、現在の東京都足立区・埼玉県草加市にまたがる地域にあった高台のことです。
かつては見晴らしの良い小高い場所で、利根川水系の流れを望むことができました。
「鴻」は大きな鳥、すなわち「こうのとり」に由来するとされます。
広大な湿地帯が広がっていたこの一帯では、鶴やコウノトリなどの水鳥が多く飛来しており、そこから「鴻の臺」と呼ばれるようになったと伝わります。
江戸から北へ向かう街道沿いに位置しており、舟運や農村の景観とあわせて、江戸近郊の小旅行先として親しまれました。
高台からの眺望は特に人気で、利根川の川面や田園が一望でき、四季折々の自然を楽しむことができました。

■ 利根川と江戸の関わり
「鴻の臺とね川風景」のもう一つの主役は、利根川です。
利根川は「坂東太郎」とも呼ばれ、関東平野を潤す大河川です。
江戸時代には、徳川幕府による大規模な河川改修が行われ、江戸の水害を防ぐとともに、水運の大動脈として整備されました。

利根川流域では米や材木などの物資が盛んに運ばれ、江戸の繁栄を支える重要な交通路となりました。
絵の中でも、川面には船が浮かび、江戸と地方を結ぶ物流の風景を暗示しています。

庶民にとっては、利根川は雄大な自然と結びついた存在でもありました。
川沿いには水辺の村々や田園が広がり、春には菜の花、夏には青田、秋には紅葉と、豊かな四季を楽しむことができます。

■絵の見どころ
 鴻の台は、国府台、小府代などとも書きます。
総寧寺の辺りから真間の辺りまでの高台で、利根川 (現在の江戸川)に臨みます。
古くは下総国の国府であり、中世期には、里見義明が城を築いたところです。
武蔵の方角をみる要塞として重要な地点でありました。
またここは里見氏が北条氏との戦いに破れたところでもあります。
江戸時代になると、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』でこの里見家がモデルとなりました。
総寧寺にある太田道灌ゆかりの榎や梅、里見家に関係する武将の墓などがあります。
 
図の左の高台が鴻の台です。
流れれいる川が利根川です。
高瀬舟が5艘確認できます。
遠く右に富士山がはっきりと確認できます。

■ 現代に残る風景
現在の足立区や市川・草加周辺は都市化が進んでいます。
利根川の流域は今も広々とした川原が残り、サイクリングロードや親水公園として整備されています。
高台から川を見下ろす地形は大きく変化しました。
広重の描いた「川の雄大さ」「空のひらけた感覚」は今も感じ取ることができます。

利根川沿いを走るサイクリングロードでは、広重の視点を思い起こしながら、現代の「江戸近郊の旅情」を楽しむことができます。
周辺の街道筋には宿場町の面影も残り、江戸時代の旅人が歩いた道をたどることができます。

■ 観光ガイドのおすすめポイント
①利根川河川敷散策
広大な川原を歩きながら、広重が描いた雄大な水景を体感できます。

②江戸川・草加宿の歴史散策
宿場町の面影を残す草加松原などをあわせて歩けば、江戸の旅人気分を味わえます。

➂文学の地を訪ねる
鴻の臺や利根川は古典文学にも登場するため、広重の絵と和歌・俳句を重ねながら巡るのもおすすめです。

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