葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「礫川雪ノ且」について説明する。
この浮世絵の礫川は、現在の文京区小石川付近である。
小石川は、小石川台と小日向台との間を流れる小石川(谷端川)の下流域一帯を言う。
浮世絵の題名の「雪の且」の「且」は「旦」の誤りである。
高台にあった茶屋の2階は、朝から雪見を楽しむ女性たちで賑わっている。
茶店は密の状態で混雑し女中は慌ただしく膳を運んでいる。
澄んだ空気の向こうに白雪をいただく富士山が見える。富士山の上空には三羽の鳥が舞っている。
茶屋の客の中にもその鳥の存在に気づき、指を差している者がいる。
藍色の空と対比し、和紙の肌で雪を表現している。
「冨嶽三十六景」のなかで唯一の雪景色である。
牛天神社はかなり小高い丘の上にあったことが分かる。富士山の見える西の方角が崖になり、眺望を楽しめる茶店が立ち並んでいる。
小石川の牛天神社付近は武家屋敷が多いので、浮世絵の名所絵の題材として選ばれることが多い。
この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。
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