葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「甲州三嶌越」について説明する。
この浮世絵の三島越とは、甲府盆地から富士山麓を経て駿河国・相模国へと続く鎌倉往還で三島へ抜ける道である。
場所は山梨県と静岡県の県境当たりである。
この浮世絵の構図は鎌倉往還の甲駿国境にある籠坂峠から臨んだ富士山の姿である。
画面中央を巨木が貫き、背後に富士がそびえる圧巻の構図である。
富士山の東側は宝永の噴火で、火山灰等がかなり堆積した場所である。よって巨木があるとは考えにくい。
巨木で「宝永火口」を隠したと考えられる。
3人の旅人が手をつないで巨木の大きさを計ろうとするのがいかにも旅の途中でおもしろい。
北斎は浮世絵「北斎漫画」の中でも「矢立の杉」を描いている。歌川広重は浮世絵「諸国名所百景」の「甲州矢立の杉」で1人で手を広げている図を描いている。
富士山の周囲に漂う雲の形が愛嬌のある形である。
この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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