尾州不二見原

葛飾北斎_富嶽三十六景_尾州不二見原 浮世絵
葛飾北斎_富嶽三十六景_尾州不二見原

葛飾北斎の浮世絵、「富嶽三十六景」の「尾州不二見原」について説明する。

この浮世絵の不二見原は、現在の愛知県名古屋市中区不二見町の付近の光景と思われる。

当地は名古屋郊外の遊廓や武家屋敷が存在する名勝地であった。

北斎は2度名古屋を訪れているが、当地を訪れたかは不明である。

「富嶽三十六景」46図中で最も西に位置し、かつ「常州牛堀」に次いで、遠距離(約167キロメートル)から富士山を眺めている。
この地から見える峰は、南アルプスの聖岳であり、富士山は南アルプスに遮蔽されて、実際は見えない。

「桶屋の富士」とも呼ばれる。人物や桶の描写も非常に細かく、本シリーズ中の傑作です。北斎だからこその幾何学的構図である。

職人が自身を取り巻くほどの大きな桶の製作に一心不乱に取り組んでいる。
その桶の中を通して遠方に小さな富士の姿を捉えるという大胆奇抜な構図に感嘆する。
桶の大きな円と富士山の小さな三角形という組み合わせにも北斎の遊び心を感じる。
画中に描かれた職人は、約15年前に刊行されている浮世絵『北斎漫画』にも登場している。

画面中央には巨大な樽の中で板を槍鉋(やりがんな)で削る職人の姿が描かれ、樽の中から田園風景の彼方に小さく富士山の姿を見せる。
樽の左側には箍(たが)と道具箱が、右には木槌が置かれ、樽が動くのを押さえている。

これに酷似した構図は、浮世絵『北斎漫画 三編』(1814-1818年)にも登場している。
このようなアクロバティックな構図は、河村岷雪(かわむら みんせつ)の絵本『百富士』の影響を受けたのではないかとの指摘がある。
空の描写には「ベロ藍」が用いられている。
上部だけ更に濃く摺って、際を雑巾がけでぼかしている。

この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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