
歌川広重-名所江戸百景-57-夏-堀切の花菖蒲 解説
現在の住所:葛飾区堀切2丁目付近
緯度経度 :緯度:35.7436 経度139.8306
出版 :1856年7月 年齢:60歳
解説
<1> はじめに
「堀切の花菖蒲」は、初夏を彩る花の名所として知られる堀切の光景を描いた作品です。
花菖蒲は日本古来の植物で、江戸時代には園芸文化の広がりとともに観賞の対象として人気を集めました。
堀切はその代表的な観賞地です。
江戸庶民が舟で訪れては美しい花の群れを愛で、茶屋で一服しながら季節を楽しんだ「初夏の行楽地」です。
<2>堀切とは
堀切は隅田川東岸に広がる地域です。
当時はのどかな農村地帯でした。
江戸市中からは舟で隅田川を上り、あるいは陸路を歩いて訪れることができました。
江戸後期、植木職人や農家が花菖蒲を栽培し始め、やがて品種改良が進みました。
堀切で生まれた多様な花菖蒲は「堀切菖蒲」として江戸全体にその名を知られるようになります。
初夏の花期には江戸の人々がこぞって訪れ、舟遊びや花見、茶屋での憩いを楽しみました。
堀切は当時の江戸っ子にとって、浅草から少し足を延ばす「小旅行地」です。
<3> 絵の見どころ
画面いっぱいに咲く花菖蒲を描き、紫や白、淡い青の花が咲き乱れる様子を、まるで香りまで感じられるかのように表現しています。
花畑の中を歩く見物客、茶屋で涼をとる人々が点景として加えられ、季節の風流を楽しむ江戸庶民の姿が活写されています。
花々の向こうには田園風景が広がり、空が大きく描かれています。
堀切は綾瀬川と隅田川の合流点の近くの湿地帯です。
堀切という地名はこの辺りにあった葛西一族の居館の城跡を意味しています。
さまざまな植物が栽培されましたが、花菖蒲で最も有名です。
花菖蒲の栽培も歴史があります。
室町末期に、地頭の久保寺胤夫が家臣に命じて奥州郡山安積沼から種子を持ち帰りました。
十九世紀はじめより菖蒲が栽培されるようになり、二代目伊左衛門は二人の旗本から品種を譲り受け、繁殖に努めて江戸一番の菖蒲園になりました。
手前に大きく描かれた花菖蒲の葉の間から、花見に訪れた人々の姿が見えます。
<4> 現代の堀切と花菖蒲
現在、葛飾区堀切には「堀切菖蒲園」が整備され、江戸時代の伝統を受け継ぐ約200種・6000株の花菖蒲が初夏に咲き誇ります。
江戸の浮世絵に描かれた花風景が、現代に蘇っています。
菖蒲園だけでなく、周辺は下町風情が色濃く残り、散策にも最適です。
和菓子屋や老舗の飲食店もあり、江戸の余韻を感じながら歩くことができます。
京成電鉄「堀切菖蒲園駅」から徒歩10分程度です。
<5> 観光ガイド
①堀切菖蒲園(6月の花菖蒲まつり)
毎年6月に「葛飾菖蒲まつり」が開催されます。
満開の花菖蒲が夜間ライトアップされます。
江戸時代から続く「初夏の風物詩」を現代に楽しめます。
②葛飾柴又との連携観光
京成線で数駅の柴又には帝釈天や寅さん記念館もあり、下町の魅力を満喫できます。
➂花菖蒲と和菓子の組み合わせ
地元和菓子店では、花菖蒲を模した上生菓子や季節限定の菓子が楽しめます。


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