葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「相州箱根用水」について説明する。
この浮世絵の箱根湖水は、神奈川県足柄下郡に位置する芦ノ湖のことである。
富士山をはさみ左側に見える山は三国山、右側の山は駒ヶ岳である。
波ひとつない湖面が広がり、湖畔のほとりには杉に囲まれた箱根神社がひっそりとたたずんでいる。
人物や生き物がおらずきわめて静寂な風景が広がる。
この浮世絵の構図は、横に平たい形で様式化された霞雲と、画面の所々に縦に勢いよく生えた杉の木々とが、画面に縦と横の一定のリズムを生んでいる。
歌川広重の浮世絵の「東海道五十三次」の「箱根 湖水図」と対照的に、この箱根はとても静かな雰囲気で表現されている。
富士山が真っ白で冬の季節と思われる。
霞雲が茶色であまり浮世絵に登場しない表現である。
この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。
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