甲州石班澤

浮世絵

葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「甲州石班澤」について説明する。

この浮世絵が描かれた場所は、富士山北西部を流れる笛吹川と釜無川が合流し富士川となる地点、鰍沢(現在の山梨県南巨摩郡)付近とみられる。
鰍沢は、内陸の甲斐国・信濃国と駿河湾を結ぶ結節点として河岸が設けられ、陸上・河川交通の要衝となった。
鰍沢は富士川舟運の拠点で、兎の瀬(うのせ)と呼ばれる難所であった。

この浮世絵の名称「石班澤」を「かじかざわ」と読ませるのは、カジカ(鰍)とウグイ(石斑魚)を誤ったためと思われる。

海の断崖で漁をする姿かと見紛うほど、迫り出した岩と波しぶきが目に止まる。

漁をする父と魚籠を守る息子、それを見下ろす富士の姿、三者三様の光景で飽きさせない。

背景には幾筋にも流れる霧と、霞んで僅かに山容をみせる裏富士と、突き出た岩と漁師、そして漁師から放たれた網とが三角の相似をなしている。

浮世絵『北斎漫画 十三編』には「甲州 猪ノ鼻」の題で、富嶽を省略した上で本図を反転させた図が載せられている。

漁をする父の描写では投網とも鵜飼とも言えないとの意見がある。

この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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