歌川広重-名所江戸百景-9-春-筋違内八ツ小路

歌川広重 名所江戸百景 筋違内八ツ小路 名所江戸百景

         (すじかいのうち やつこうじ)

歌川広重-名所江戸百景-9-春-筋違内八ツ小路

         (すじかいのうち やつこうじ)       

 

現在の住所:千代田区 神田須田町1丁目付近

緯度経度 :緯度35.6952:経度139.7706

出版   :1857年11月  年齢:61歳 

解説

<1> はじめに

「筋違内八ツ小路」は、江戸市中の交通の要所を描いた一枚です。

当時の町の賑わいや都市構造を知る上で貴重な作品です。

自然の風景や寺社の景観を描いた図が多いシリーズのなかでも、“江戸の町そのもの”の姿をクローズアップした点に特色があります。

<2> 筋違橋と八ツ小路とは

筋違橋(すじかいばし)は現在の千代田区神田和泉町から秋葉原付近にかけての場所にあった橋です。

外堀に架けられていました。

日本橋からの道と、本郷、下谷から神田に通じる筋が交差する地点なので筋違といいます。

江戸の交通の要衝であり、多くの人や物資が行き交いました。

橋のたもとから放射状に八本の道が分岐していたことから、この名がつけられました。

八ツ小路は、奥羽街道、日光街道、中山道、東海道、甲州街道などの十以上の街道が集まったところで、「八ツ」はたくさんという意味です。

現代の都市に例えるならロータリーのような場所で、人や荷車が集中し、活気に満ちた場所です。

江戸は人口100万人を超える世界有数の大都市です。

その中核を支える交通のハブがこの筋違内八ツ小路でした。

商人や旅人にとって、ここを通らずして江戸を語れないほどの重要地点です。

江戸城の外郭の北門で、神田見附の御門があったところで、幕府は火除地としてこの広小路をつくりました。

<3> 絵の見どころ

八方向に広がる通りを見下ろすように配置して、“江戸のクロスロード”を印象づけています。

この大胆な構図は浮世絵のなかでも異彩を放っています。

通りには商家が立ち並び、人々の往来が絶えません。

行き交う商人、荷物を担ぐ人足、買い物に出る町人たちの姿が小さく描かれ、都市の活気が伝わります。

江戸の町と富士山をセットで描き、江戸の繁栄と自然の象徴を結びつけています。

日常の街角からでも富士を望めるというのは、江戸の風景の大きな魅力でした。

放射状の街路と小さな人々を組み合わせることで、都市のスケール感と立体感が生まれています。これにより、絵を眺めると自然と視線が遠くへと導かれ、実際に街路に立っているかのような臨場感を味わえます。

柳の植えられた堀の向こうには神田川が流れています。

昌平橋を渡ると、右上の神田明神に続きます。

広場の端、左の建物は武家屋敷です。

その右には小さな番小屋があり、右下には掛茶屋があります。

左下の行列は、緋毛氈(ひもうせん)に覆われた駕籠にのった大名の奥方一行です。

中央左の建物は天野弥五右衛門屋敷です。

右上の森は神田明神です。中央の建物は辻番所です。

<4> 江戸庶民にとっての八ツ小路

物資や人々が集中する場所は、情報や流行も集まります。

江戸庶民にとって八ツ小路は、ただの通行点ではなく「出会いと交流の場」でもありました。

日本橋や神田といった経済の中心街にも近く、買い物や商取引のついでに必ず通る道でした。

そのため八ツ小路の賑わいは江戸の繁栄そのものを象徴していたといえます。

富士山や桜並木といった「名所」だけでなく、こうした日常の交差点を名所として取り上げた広重の視点は斬新でした。

庶民が「ここ、知ってる!」と共感できる題材だったことも人気の理由です。

<5> 現代の筋違橋・八ツ小路跡

現在の秋葉原駅周辺にあたります。再開発により当時の街路は姿を変えましたが、「筋違橋交差点」や「万世橋」などにその名残を感じることができます。

江戸の交通の結節点だった八ツ小路の精神は、現代の秋葉原駅や中央通りに引き継がれています。

鉄道や道路が集中する場所である点は、江戸から今に続く特徴です。

浮世絵を片手に、秋葉原から神田、日本橋方面へ散策すると、江戸から現代への町の変遷を実感できます。

特に万世橋近くの交通量の多さは、江戸の八ツ小路を彷彿とさせます。

<6>観光ガイド

①秋葉原周辺の散策

 江戸の八ツ小路があった場所を歩き、現在の交通と比較する楽しみ。

②万世橋界隈の歴史探訪

 かつての筋違橋にゆかりのある地名や史跡をたどる。

➂浮世絵との比較

 広重の「筋違内八ツ小路」を実際の地図と照らし合わせ、江戸の町割りを体感する。

➃江戸から東京へ続く交通史

 江戸の八ツ小路から現代の秋葉原駅まで、交通の中心地としての役割が続いていることに気づけます。

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