甲州伊沢暁

浮世絵

葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六」景の「甲州伊沢暁」について説明する。

この浮世絵の伊沢は、現在の山梨県笛吹市石和(いさわ)のことである。

笛吹川の川岸にある甲州街道の宿駅で三島越への分岐点にあたる。

今の石和は、東京近郊の温泉地である。

日の出前の時間帯。宿場町の背後を静かに流れる笛吹川と富士の裾野に立ち込める朝靄が清澄な雰囲気をつくり出している。
朝靄の先には朝焼けに浮かび上がる富士山の偉容が姿を現そうとしている。手前では、林立する小屋が多数配置されている。
早立ちする人馬が慌ただしく列を作っている。

この浮世絵の構図は、近景の宿場町と中景の笛吹川と遠景の富士の三つが風景に調和している。

右手に鎌倉往還の板橋が見える。

現在の石和温泉は、戦前より葡萄畑栽培に必要な井戸を掘った農家が25℃前後、硫化水素臭のする水が出ていた。温泉が出るのではないかと噂されていた。
1956年12月、小松導平の敷地内で私費を投じ井戸を採掘したところ40℃以上の温泉が湧出した。
これを受け、ローマ風呂や遊具などを設置し、昭和時代にレジャー施設として地元で人気を集めた。

この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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