
歌川広重-名所江戸百景-17-春-飛鳥山北の眺望 解説
現在の住所:北区王子1丁目 飛鳥山
緯度経度 :緯度35.7486:経度139.7366
出版 :1856年5月 年齢:60歳
解説
<1> はじめに
「飛鳥山北の眺望」は、江戸庶民の行楽地として人気を誇った飛鳥山から北方を見渡した景観を描いています。
飛鳥山は、現在の東京都北区王子に位置し、徳川吉宗が桜を植え整備して以降、江戸市民にとって代表的なお花見スポットとなりました。
本作は、そんな飛鳥山からの視点で、利根川水系の流れや武蔵野の広がりを遠望できる構図をとり、江戸の「行楽文化」と「大自然のスケール」を一枚の画面に表しています。
<2> 飛鳥山とは
1716〜1736年、八代将軍徳川吉宗が庶民の行楽地を増やすために、飛鳥山に桜の苗木を千本植えました。
これが「飛鳥山の桜」のはじまりです。
江戸中心から離れていたために幕府の目も届かず、庶民が酒宴を楽しんだ場所です。
江戸市中からのアクセスも良く、花見・水遊び・散策に最適なため、年間を通じて多くの江戸っ子で賑わいました。
飛鳥山周辺は王子稲荷や王子権現などの寺社も多く、信仰と遊楽を兼ね備えた観光地でした。
飛鳥山の地名は、この地の領主豊島氏が紀州新宮の飛鳥明神の分霊を山頂に祀ったのがはじまりです。
山頂からは、西に富士山、北に筑波山が一望できた景勝地です。
<3> 絵の見どころ
飛鳥山の高台から北を望み、荒川の流れやその先に広がる武蔵野台地を描いています。
空と大地の広がりが強調され、江戸の外へ続く壮大な景色を感じられます。
前景には花見を楽しむ人々が描かれており、団子を食べたり酒を酌み交わしたりと、江戸庶民のにぎわいが生き生きと表現されています。
晴れた空の下、秩父山地や日光連山を望むことができたと伝えられます。
江戸っ子にとっては「日常の外側」にある自然への憧れを感じます。
桜の花房を手前に配し、その向こうに広がる関東平野を見渡すという「額縁効果」を持たせることで、画面に立体感と奥行きを与えています。
前景の山頂には満開の桜に敷物の上でお酒やお弁当を広げて食べながらくつろぐ人、踊る人、瓦投げをする人たちがいます。
中景には田園風景が描かています。上の中央に筑波山が描かれています。
<4>江戸庶民にとっての飛鳥山
江戸三大花見の名所として「飛鳥山・上野・隅田川堤」があり、その中でも飛鳥山は最も庶民的な雰囲気を持っていました。
近隣には王子稲荷や王子装束ゑの木などの狐火伝説の舞台があり、祭礼や参詣の後に飛鳥山で遊ぶのが定番でした。
春は桜、夏は涼を求める避暑地、秋は紅葉狩り、冬は雪景色と、一年を通じて人々を惹きつけました。
<5>現代の飛鳥山
現在も「飛鳥山公園」として整備され、都内屈指の桜の名所です。
春には多くの花見客で賑わい、江戸時代の賑わいを今に伝えます。
JR王子駅から徒歩すぐの立地で、モノレール「アスカルゴ」に乗れば丘の上まで楽に行けます。
公園内には「紙の博物館」「北区飛鳥山博物館」「渋沢史料館」があり、歴史と文化に触れることができます。
<6>観光ガイド
①春の桜
江戸時代から続く桜の名所。夜桜ライトアップも見どころです。
②渋沢栄一ゆかりの地
渋沢史料館で日本近代経済の父の足跡をたどれます。
➂王子稲荷・王子装束ゑの木
狐火伝説や大晦日の祭りなど、民俗的な魅力を体感できます。
➃展望ポイント
高台から北方を眺めれば、広重が描いた景色の一端を追体験できます。


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