歌川広重-名所江戸百景-16-春-千駄木團子坂花屋敷 解説

歌川広重 名所江戸百景 千駄木團子坂花屋敷  名所江戸百景

歌川広重-名所江戸百景-16-春-千駄木團子坂花屋敷 解説

          

現在の住所:文京区千駄木2丁目(団子坂通り、旧花屋敷跡は現在の日本医科大学付近)

緯度経度 :緯度35.7258:経度139.7622

出版   :1856年5月  年齢:60歳 

解説

<1> はじめに

「千駄木團子坂花屋敷」は、江戸の下町情緒と行楽文化が色濃く映し出されたとして人気があります。

千駄木は現在の文京区にあたる地域で、谷根千地域の一角として現代も多くの人々に愛されています。

團子坂(だんござか)の名の由来ともなった茶屋や花屋敷の賑わいが描かれ、江戸庶民の遊楽文化を知るうえで欠かせない作品となっています。

<2> 團子坂と花屋敷とは

現在の千駄木二丁目から三丁目にかけての坂道で、江戸時代には多くの茶屋が並び、名物の「団子」を出すことで知られていました。

散策や寺社参詣の途中に立ち寄る人々で常ににぎわった場所です。

坂の周辺には花々を植えた庭園や料亭があり、これを「花屋敷」と呼びました。

梅や桜、牡丹など四季折々の花を楽しめる庭園は、江戸庶民にとってまさに「小さな楽園」でした。

千駄木は上野や谷中に近く、寺社も多いため、散策ルートの途中にあたりました。

そのため「物見遊山」の人々にとって格好の立ち寄り処となったのです。

<3> 絵の見どころ

絵の中心には、坂を行き交う人々の姿が描かれています。

買い物をする町人、花を眺める遊客、団子を食べる子どもたちなど、江戸の日常の一コマが生き生きと表されています。

團子坂の名の由来となった茶屋では、名物の団子が供されました。

香ばしく焼かれた団子に甘辛いタレをつけ、景色を眺めながら味わう、それは江戸庶民にとって最高の贅沢です。

背景には、花屋敷の庭園に咲き誇る花々が彩りを添えています。

春の桜、初夏の花菖蒲や牡丹など、四季の移ろいを感じさせる演出は、広重の巧みな表現力の見せ場です。

坂の上からは遠く江戸の町並みが広がり、空にはのびやかな広がりが感じられます。

庶民の遊興と大都市江戸の風景が同居する構図は、名所絵ならではの魅力です。

画面が雲によって上下に仕切られています。

団子坂は画面外の右方にあたり、ちょうど絵の階段と同様の勾配で奥から手前へと下っているはずでする。

代わりに坂の南に位置した花屋敷、元植木屋楠田宇平次の園「紫泉亭」が画面上方にあります。

紫泉亭は三階建ての変わった造りで、建物内では沐浴も出来たようです。

<4>江戸庶民にとっての團子坂花屋敷

高価な遊興ではなく、団子や花を楽しむ手頃な娯楽として人気でした。

家族連れや友人同士で訪れることが多かったと伝えられています。

谷中や千駄木周辺には寺社が多く、参詣と花見をセットで楽しむことが定着していました。

茶屋の団子を味わいながら俳句を詠んだり、花を題材に絵を描いたりと、文化的な楽しみ方も盛んでした。

<5>現代の「團子坂」と花屋敷跡

現在も千駄木に「団子坂」という地名と坂道が残っています。

坂の勾配はやや急で、当時の面影を偲ばせます。

かつての花屋敷は失われていますが、周辺には庭園風の寺院や緑地が点在しており、散策すれば「江戸の花見文化」を想像できます。

現在では谷中銀座商店街や根津神社とあわせて観光コースに含まれ、団子坂の名はカフェや和菓子店などにも使われています。

<6>観光ガイド

①団子坂散策

 坂道を歩きながら、かつての茶屋の賑わいを想像してみましょう。

②谷中銀座で食べ歩き

 江戸時代の団子の雰囲気を現代の商店街飲食店で楽しむことができます。

➂根津神社・谷中霊園

 団子坂とあわせて歴史ある寺社めぐりを組み合わせるのがおすすめです。

➃文学散策

 千駄木は夏目漱石や森鴎外など多くの文豪ゆかりの地でもあります。

文化の香りを味わいながら歩いてみましょう。

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